お尻にある筋肉の中で、最も大きい筋肉が「大殿筋」です。
大殿筋をトレーニングすることで、股関節を動かす力を向上させ、お尻の引き締め効果、垂れ尻の改善などが期待できます。
しかし、やみくもにお尻を鍛えているだけでは、大殿筋の一部分しかトレーニング出来ていない場合があります。
それは、なぜか?
大殿筋は一つの筋肉ですが、上部と下部によって作用が異なるためです。
本記事では、理学療法士、パーソナルトレーナー、バランスボールインストラクターである私が、大殿筋の上部線維と下部線維の作用の違いや、それに対するトレーニング方法を解説します。
是非最後までご覧ください。
大殿筋とは
大殿筋は、単一の筋肉としては人の筋肉の中で最大の筋肉です。
大きい筋肉ですので、筋肉が付着している範囲も広くなります。
以下が、付着部と神経支配になります。
起始:仙骨と尾骨の後面、腸骨後方の後殿筋線の後部、胸腰筋膜
停止:腸脛靭帯の近位端、深部線維は殿筋粗面まで付着。
神経支配:下殿神経(L5、S1、S2)
大殿筋の作用
大殿筋全体としての作用は、股関節の伸展作用と外旋作用です。
特に股関節伸展作用は非常に強力です。
では、内転・外転作用についてはどうでしょうか?
大殿筋は、上部線維と下部線維で作用が変わります。
大殿筋上部線維の作用
大殿筋上部線維は、股関節内外転軸の上方にある筋肉です。
そのため、大殿筋上部線維は股関節外転作用を有しています。
これにより大殿筋上部線維の作用は、股関節伸展、外転、外旋作用となります。
補足として、内外旋については股関節屈曲90°以上の場合は、大殿筋上部線維が内旋モーメントアームを形成するという報告もあります。
これはストレッチをする際に役立つのですが、股関節を深く曲げた姿勢での外旋ストレッチは、大殿筋上部線維もストレッチされている可能性が高いということですね!
大殿筋下部線維の作用
大殿筋下部線維は、股関節内外転軸の下方にある筋肉です。
そのため、大殿筋下部線維は股関節内転作用を有しています。
大殿筋下部線維の作用は、股関節伸展、内転、外旋作用となります。
大殿筋を上部線維と下部線維に分けたトレーニング
このように、大殿筋全体でみると股関節伸展と外旋なのですが、もう少し詳しくみると上部線維と下部線維では内転、外転作用に違いがあります。
これを把握していないと、例えば大殿筋のトレーニングをしようとして、股関節伸展、外転、外旋運動だけを行っていた場合、大殿筋の上部線維だけしか鍛えられていないということになってしまいます。
大殿筋を上部線維と下部線維に分けてトレーニングする方法はたくさんあります。
今回は、大殿筋の上部線維と下部線維のトレーニング方法の一例をご紹介します。
大殿筋上部線維のトレーニング方法
大殿筋上部線維のトレーニングには、股関節伸展+外転の組み合わせが必要です。
そのトレーニングの一例として、エクササイズバンドを使った「ヒップアブダクション(プローン)」をご紹介します。
ヒップアブダクション(プローン)
【ポイント】
- 脚を開いたとき、つま先は外に向き過ぎないように注意しましょう。お尻ではなくももの筋肉を使い過ぎてしまう場合があります。
- 脚を開くときに、お尻の上のほうの筋肉を使っている感覚を意識しましょう。
- 腰が反り過ぎないように、少しお腹を凹ませた状態をキープしながら行いましょう。
大殿筋下部線維のトレーニング方法
大殿筋下部線維をトレーニングするためには、股関節伸展+内転の組み合わせでトレーニングする必要があります。
そのトレーニングの一例として、「ボール挟みヒップリフト」をご紹介します。
ボール挟みヒップリフト
【ポイント】
- 両膝の間で、ボールをつぶしている力が抜けないように注意しましょう。
- お尻を上げる前に骨盤を後傾させることで、腰の筋肉の使い過ぎを防ぐことが出来ます。
- 膝の間に挟むものは、ボールが無ければ適当なクッションなどでも代用出来ます。
まとめ
大殿筋は大きな筋肉で、トレーニングの対象にされることが多い筋肉です。
面積が広い筋肉のため、筋全体をトレーニングするためには、大殿筋上部線維と下部線維を意識してトレーニングする必要があります。
同じ大殿筋のトレーニングでも、トレーニング方法を変化させて、大殿筋全体をしっかりトレーニング出来るようにしましょう!
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理学療法士として、腰痛や肩痛、膝痛など様々な症状の患者さんの治療経験から、ただのトレーニングではなく、動ける身体づくりを目指しています。
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